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  • まぁさん

一期一会

ウィキペディア(Wikipedia)より転記しました。


「一期一会(いちごいちえ)とは、茶道に由来する日本のことわざ・四字熟語。茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いであるということを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす心構えを意味する。茶会に限らず、広く「あなたとこうして出会っているこの時間は、二度と巡っては来ないたった一度きりのものです。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る最高のおもてなしをしましょう」という含意で用いられ、さらに「これからも何度でも会うことはあるだろうが、もしかしたら二度とは会えないかもしれないという覚悟で人には接しなさい」と戒める言葉。一生に一度だけの機会そのものを指す語としても用いられる。」


ここ最近は、この言葉を噛みしめながら過ごしています。


★★★

少し話が遡りますが、今から2年前、父の弟(次男)で埼玉に暮らす叔父から父に届いた年賀状から、叔父が癌を患っていることが分かりました。


その際、父は何かを感じたのでしょう。「埼玉の弟に会いに行く!」と言い出しました。そして私も同行することになり、車で出かける準備を始めました。


その話を聞いた、大阪で暮らす叔父(三男)が、「それならば俺も行く!」と、夫婦連れ立って電車で埼玉まで向かいました。


こうして数十年振りかに三兄弟が揃ったのが、2年前の5月でした。その時の父と叔父たちはとてもとても嬉しそうに談笑していました。


そして三人が揃った写真を撮らせてもらったところ、どちらの家庭からも喜びの声が届きました。


この写真を眺めた際、父はポツリとつぶやいていました。

「もうこうやって三人揃うことはないんやろうな。」


その埼玉の叔父は、昨年夏に亡くなりました。まさにその一年前の再会が、最後の機会となりました。


三人が揃った時の写真がとてもよく撮れているということで、叔父の遺影に使われました。


★★★

やがて父は弱っていき、昨秋から年末にかけては、かなり落ちてきていました。

そのことを大阪の叔父に伝えたところ、夫婦で年明けにやって来られました。


実は大阪の叔父は三つの癌を患っていました。特に10年前にすい臓癌になった時には、家族も親族も覚悟を決めました。私は病名を忘れましたが、他にもある奇病にかかったらしく、大学病院でずっと診てもらっていました。


その際、叔父は体のことを気遣うようになり、病院での手厚い治療のおかげもあってか、一時は余命を宣告されていたにも関わらず、今では「あんたは奇跡の人や」と医者から言われているとか。


それ以来、叔父は気丈になりました。肝が座ったと言いますか、何も怖れず、そして何にでも感動して日々を暮らす人になりました。


そんな叔父が、最近の父とのやりとりで何か感じるものがあったのでしょうね。

「今、会いに行かなあかん!」と飛んできたのでした。


再会するなり、「あにき、気を強う持たなあかんで!」とハッパをかけていた叔父。三日間の滞在中もずっと父に寄り添って励ましていました。


一緒に母を見舞い、


二日目には私の暮らす加子母にご案内しました。


明治座では大興奮!10年前にすい臓がんを患ったと聞き、「是非、元気をくれ!」と、案内してくださった保存会の方から握手を求められていました。

また、加子母大杉に感動し、我が家でもいろいろ感動してくれました。昼食は理恵が心を込めてご提供しました。



加子母から宿に戻った夜、「おっちゃんな、今度の旅で一生の思い出に残る感動をいっぱいもらったで!」と興奮気味に話してくれました。


不思議だったのが、最近の父は耳がすっかりと遠くなり、私とも面談ボードを使わないと会話ができていないのですが、叔父の声だけは分かるようでした。ですから叔父とだけは何も使わずに直接会話をしていました。もっとも二人とも大声で話していたのですが。


そしていよいよ別れの時が近づいてきました。最後まで「あにき、気をしっかり持って生きるんやで!」と声をかける叔父。「うんうん、分かってる。」と答えながらも、2年前とは大違いで力なく返事する父。


最後に車で別れの挨拶をする時、父も叔父も顔をくしゃくしゃにして泣き出しました。もう声になりません。


叔母が「あんた、なに泣いてんねん!?」と声かけしたら、「しゃぁないやないか!目から涙がこぼれるんやから!」と、わんわん泣く叔父。


別れてからしばらくの間は、父は放心状態の様子でした。やがて気持ちが落ち着いたころに一言つぶやきました。


「あいつと会うのも、これが最後やろうな。」


★★★

その父のせりふを聞いた時、私は「一期一会(いちごいちえ)」という言葉を思い出しました。


「一期一会」は、私が幼い時に父が初めて教えてくれた四字熟語です。


「お父さんはな、以前少しだけ茶道を習ったことがあったんや。結局、茶道そのものは身につかんかったけど、その時に教えてもらった『一期一会』という言葉が印象に残ってな。これが今ではお父さんの大好きな言葉なんや。」


そんな話を何度となく聞かされたものでした。


そして今、父はまさに今回のことをそのようにとらえているのだろうなと感じました。


家族をはじめ、人と会う時には、「これが最後かもしれない」とはなかなかとらえないものだと思います。


でも、生まれたものはいずれ死にます。自分を含め、誰しもがそうなります。家族や友人とも、いずれは別れがやってきます。


そのことは頭では分かっているつもりでも、その時が明日、いや今、やってくるなんて想像はしていません。


別の表現をするならば、今夜、床に入って眠りに入った後に、翌朝再びまぶたが開くかどうかというのも、「絶対」ではありません。私も周りも。


だからこそ、今自分が生きていること、人と会えていることはとても有り難いことなんですよね。


父と叔父がこの先どうなるかは分かりませんが、ともかくも今回このように会えたことはとても意義深いことであったでしょうし、有り難いことでありました。


そしてその場に居合わせていただいた私も、人との出会いや、身の回りに起きる出来事と向き合う際に、一期一会の心持ちで臨んでいこうと心している次第です。

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